http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062645602/250-6853429-1150633


これも内容は密室殺人。犯人はすぐわかるがトリックはわからない。
前作よりもまとまりが良かったと思います。孤島とかそういう設定じゃない分、無理を感じないのだと思う。いや、トリックにはそれほど無理はないけど「別にそこまでする意味無いんじゃあ」という点では前作と同様の無理を感じる。でも萌絵が襲われたシーンなど、ちょっとドキドキしたし面白かった。

以下ネタバレ。




事件は大学の研究所内実験室で発生。
実験室内に死体が二つあり、部屋には鍵が掛かっている。密室と思わせる為の小細工はいろいろあるが、鍵を使える人が犯人だ。それ以外ないし、結論もそうだ。

鍵は守衛室と教授室にある。だから守衛か教授が犯人。
守衛と教授は事件発生当時複数人で行動している。死体も二つあるので当初から単独犯でないことが想定されている。だから守衛二人、或いは教授と助手の共犯の二択。守衛は殆ど調べもせずにスルー、教授と助手の共犯で終了。


今回のトリック、密室はどうでも良い。被害者と犯人の入れ替わり部がメイントリックだ。被害者は実験室内で着ぐるみを着て作業をしており、その最中に殺害する。しばらくは生きているように見せて犯行時刻を不明確にするため、教授と助手が被害者の着ぐるみを着て少しだけ行動する。刺殺なので着ぐるみに血痕を残さないようにするのが今回のメイントリック。読んでてわからなかったのがそこだけだし、犯人を特定するのもそこだけだ。細かいが良いトリックだと思う。他の部分は推理小説ファンなら誰でもわかるんじゃないだろうか。


トリックは良いと思うのだが疑問が残る。そんな細かい計画立てたって、ナイフで刺殺って大変だよ?とか。一突きで殺すなんて素人にはまず無理。小細工したって警察がちゃんと調べれば犯行時刻はバレバレだし。あと、助手が院生室まで着ぐるみを着たまま返しに行く工程が気になる。無理がないですか。そのまま非常口から出たことにしちゃえば良いのに。


根本的なところでは以下。


1.外部犯に見せたい人が何でわざわざ研究所内で犯行に及ぶのか。シャッターが壊れてたとか、そういう小ネタ以前に研究所内で殺害するのは不自然極まる。密室なら自殺偽装か内部の誰かに罪を擦り付けるような展開にしないと。


2.警察の捜査が杜撰すぎる。ちょっと前に殺人事件があった現場において、萌絵が研究所内で襲われたというのに、鍵が掛かっていたという理由で捜査しない部屋があったなんて。

3.犯人が敢えて難しい課題にトライしているという不自然さを感じる。代替手段がいくらでもあるような状況設定はどうなのか。状況面、動機面での裏付けが全く足りない。


法月倫太郎みたいな感じで、推理小説としては金返せって言いたくなる内容だが、今回は初手からキャラ小説のつもりで読んだので問題なし。